ワークショップの概要
今回は、トラウマに対する身体心理療法的アプローチをテーマに、公開ワークショップを開催します。最近の神経生理学の研究において、トラウマは身体化されており、身体がトラウマ的な状況を覚えていることが判明しています。そのためにトラウマからの回復には、言語のみのアプローチでは限界があり、身体を導入した心理療法(身体心理療法)が必要とされています。「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」によって辛い思いをされている多くの人を支援するためにも、トラウマを扱うことのできる優秀な身体心理療法家であるミラノ大学医学部教授モーリッツィオ・スチューピジア博士を迎えて公開ワークショップを行うことにしました。今回は、イリノイ大学医学部教授であるスティーヴン・ポージェス博士による「ポリヴェーガル理論」を含めた、トラウマに対する身体心理療法的アプローチをご紹介いたします。
なお、通訳には、身体心理療法の書籍を翻訳し、BIPSのトレーニングの通訳も行っている国永史子が行います。
清里という自然豊かで居心地のいい空間で、安心感のなかで身体心理療法的アプローチを体験を通して学んでみませんか?
具体的に行うこと
モーリッツィオ博士は、2016年に「侵害された身体:虐待のトラウマへの身体心理的アプローチ」(イタリア語/スペイン語)という本を出版し、抽象的な説明や一般論ではなく身体と心の痛みの物語として、虐待の臨床例に基づいて心理療法の過程を具体的に詳しく説明しています。特に心理療法家が細心の注意を払うことの重要性に言及しています。
虐待を体験したクライアントを、身体に特別な注意を払わずにケアすることは不可能です。その理由は、これらの場合において記憶は一種の「身体記憶」に埋め込まれており、最も単純な感覚刺激であっても、無秩序な形で記憶が現れるからです。ですから通常の身体心理的アプローチでさえ、虐待のトラウマに再適応させる必要があります。十分な注意を払わずに、エネルギーを強化する通常の技法を用いることはできないのです。
では、トラウマを抱える人に対して、どのようにかかわればいいのでしょうか。通常の身体心理療法的アプローチと比較しながらどのような点に注意しながらトラウマを扱うかを、臨床例を用いて神経生理学、身体心理療法の観点から説明し、体験を通して学んで頂きます。
バイオシステミックス学派について
バイオシステミックスは、神経生理学とシステム理論という二つの理論から成り立っているのが特徴です。神経生理学者のアンリ・ラボリットは、私たちの脳にはある行動が不可能な場合、それをブロックする神経経路が存在することを研究によって明らかにし、このことを「行動抑制システム」と名付けました。このシステムにより抑制された行動や感情を解き、それをうまく表現できるように、セラピーは進められます。それとともに母子関係の観察に基づく発見を中心に、システム理論をセラピーに取り入れています。バイオシステミックス学派の創始者であるジェローム・リス博士はBIPSのトレーニングの前身、バイオシンセシスのセラピスト養成コースの初期に2度来日して、直接日本で指導しました。さらに、エコロジーやコミュニケーション方法への深い興味から、この方面での貢献も深く、最近邦訳された『悩みを聴く技術』では、バイオシステミックスに根を置く傾聴法を読みやすく紹介しています。 ジェローム・リス博士とデイビッド・ボアデラは親交が深く、互いの考えの中に多くの共通点があります。ヨーロッパ学派に共通して言えることはアメリカ学派に比べて、優しく柔らかなアプローチが多い点です。 アイコンタクト、タッチなどに関しても最近の母子関係の研究から、子供が許容できる以上の過度のコンタクト、エネルギーによる侵入が問題になっていることから、クライアントのニーズに基づいて、程よい関係を探ることの重要性を強調している点もヨーロッパからきている主な流れです。
ジェローム・リス博士による記事が以下にありますので、ご参照ください。
どのような人に向いていますか
- 自己成長、身心相関に興味のある方
- 身体面に興味を持つ公認心理師、臨床心理士、カウンセラー、コーチなどの対人支援職の方
- ご自身がトラウマを抱えている方
- トラウマで悩んでいる家族、友人、同僚などがいる方
- 自律神経系を整えたい方
- 身体面から自己を解放したい方
ワークショップの詳細
日 程 | 2023年 |
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講 師 | モーリッツィオ・スチューピジア(BIPS国際トレーナー) |
通 訳 | 国永史子(BIPSディレクター) |
スタッフ | 贄川治樹(BIPSディレクター) |
対 象 | 一般の方、専門家問わず、ご興味のある方 |
定 員 | 25名 |
料 金 | 80,000円(消費税込み、2泊4食付き) |
会 場 | 伊予ロッヂ(山梨県北杜市高根町清里3545) |
申込期日 | 2023年10月5日 |
振込期日 | 2023年10月13日 |
問合せ先 | BIPS事務局(贄川) |
申込方法 | 名前・住所・連絡先を明記の上、 |
キャンセル料 | ・14日前: |
講師略歴
モーリッツィオ・スチューピジア(Maurizio Stupiggia)
バイオシステミックス学派評議員
イタリア身体心理療法協会役員(評議員)
ミラノ大学医学部教授
イタリア人の心理療法家、心理学博士、哲学者。イタリア身体心理療法協会役員(評議員)、ミラノ大学医学部教授、ジュセルドルフの西ドイツ大学助教授、ボローニャ大学グループカウンセリング客員教授、ヨーロッパ身体心理療法協会理事。身体心理療法の1つであるバイオシステミックス学派(神経生理学と母子関係などのシステム理論を重視した身体心理療法)の重鎮であり、グループダイナミックスを用いるワークに優れ、ビデオを使った母子関係のマイクロトラッキングの研究から得られた成果を心理療法に活かしている。トラウマに関しては、バイオシステミックス学派の創始者、故ジェローム・リス博士がスティーヴン・ポージェス博士と親交があったことから、最新の情報を心理療法に活かしている。2007年には虐待のトラウマへの身体心理療法のアプローチの本(イタリア語/スペイン語)を書き、世界的に評価される。
スタッフ略歴
国永 史子
ヨーロッパ・ボディサイコセラピー協会(EABP)
公認ボディサイコセラピスト
翻訳家・通訳者
1949 年富山県生まれ。お茶の水大学英文科卒業。1981 年、バイオエネルギー研究センターをデニス・ホーナーと創立し、デイビッド・ボアデラ、ルーベンス・キグネル、ヘレン・デービス、ウィル・デービスらを海外から招き、セミナー、ワークショップを開催、年2 回機関誌「バイオエネルギー・ジャーナル」を編集、発行する。ライヒ派セラピーとライヒの科学的研究の紹介を続ける。1982 年からデニス・ホーナー、シルビア・ボアデラらとセラピーの自助グループを作り、トレーニングを行う。またボディサイコセラピー関連の多くの翻訳を手掛ける。現在は、バイオシンセシス研究センター所長を経て、バイオインテグラル・サイコセラピースクール・ディレクター。EABP 認定ボディサイコセラピスト
贄川 治樹
ヨーロッパ・ボディサイコセラピー協会(EABP)
公認ボディサイコセラピスト
国連NGO 世界心理療法協議会(WCP)
公認心理療法家
1961 年生まれ。中央大学商学部卒業。1981 年より女性ヴォーカリスト浜田麻里のツアードラマーとして武道館、NHK ホール、中野サンプラザを初め全国で公演。1992 年にロルファーのマーク・カフェル博士に師事し「シン・インテグレーション」資格取得。1995 年に「シン・インテグレーション」上級資格取得。1998 年バイオシンセシスのディプロマ取得。1993 年より東京にて個人セッション、ワークショップ、講座などを行い、現在に至る。2005 年〜2009 年は、ヤマハ株式会社にて「音楽と健康」についてのプログラム開発と楽器開発のアドバイザーに就任。2006 年リズムセラピー研究所を開設し、ボディサイコセラピーにドラミングを取り入れる。韓国政府青少年委員会支援のもと、ソウルの精神科医呂寅仲氏と行った「ひきこもり」の青少年たちへのドラミングを利用した治療プログラム、乳幼児突然死症候群の国際会議で遺族に対する音楽療法、自治体の高齢者のための介護予防教室、東邦大学医学部有田秀穂名誉教授が代表を務めるセロトニンDojo のプログラムなどを行う。バイオインテグラル・サイコセラピースクール・ディレクター(元バイオシンセシス研究センター副所長)。EABP 認定ボディサイコセラピスト。国連NGO WCP(世界心理療法協議会)公認心理療法家。15 年前より西洋と東洋の精神性を統合するために、東京での活動とともに新潟の豪雪地帯に佇む再生古民家「越後奥寂庵」に身を置き、2014 年にインドのKaivalyadhama Yoga Institute にてO.P.Tiwariji よりインターミディエイトコースにてプラーナヤーマを学び、ここ数年はインドのSwamiji よりアドヴァイタ・ヴェーダンタを学ぶ。